思考次元モデル

1. はじめに

私たちはある物事に対して、多層的な思考をする。例えば、近所の苦手な人とばったり会ったとき、挨拶をするにしても「挨拶しなくちゃ」「挨拶しないでばれないかな」「あの人苦手なんだよな」「気持ちよく挨拶して良い関係を築くか」「今日の服装や体調は…」「挨拶は昔から苦手…」など実際にメインに考える思考としては「挨拶しなくちゃ」だとしても、その他の思考がその思考の強さの濃淡は様々ながら同時に行われているのではないだろうか。このように、思考は多次元で行われているという疑問を本記事ではモデル化しまとめた。

2. 思考の多次元モデルおよびMinskyの思考モデル

まずは、筆者が本記事の調査前にモデル化した思考次元モデルを図示したもの(図1)について説明する。

(図1) 思考の次元モデル

ある物事に対する思考は図のような階層性を持ち、思考が行われていると考える。レイヤーの上から①解決思考、②手段思考、③準備思考、④大目的思考、⑤中目的思考、⑥背景的思考の6つのレイヤーで構成され、これらから思考対象へ思考が行われていることを示している。

モデルの例として、事業を任されたときの思考を表現したい。上レイヤーから、①解決思考:「成功することで売上向上しなくては」②手段思考:「どのような展開をしていくか」③準備思考:「これらの展開はどういう段取りで行っていくか」④ 大目的思考:「稼いで海外で豪遊したい」⑤中目的思考:「出世して給与をあげたい」⑥背景的思考:「実家が貧乏で海外旅行の経験が少ない」などの思考例がモデルから表現できる。厳密に分ければ、より細分化したモデルになると考えられるが、大枠として以上のようなモデルになると考える。

こうしたモデル化を行い、文献調査を行う中で、「人工知能の父」として有名な学者であるマービン・ビンスキー(Marvin Lee Minsky)のモデルや考え方が今回の思考次元モデルと近しい考え方を持ち、(より詳細に)記述していたため、紹介したい。

Minskyは心を持たないものであるエージェントが心になっていくと述べた。例として、服を着る際に、気温を感じ着用を促すエージェント、服を掴み着用するエージェントや転ばずに直立するエージェントなど、ある行為には、こうした心を持たないエージェントが多く存在し、これらが組み合わさることで、心になっていくとした。つまり、心とは大きな枠組みではなく、一つ一つのエージェントが集まり、組み合わさることで心になると指摘している。心を細分化し、集合的にみる考え方は人工知能的なものだと感じられる。また、エージェントには階層性があることも指摘している。

(図2) Minskyの思考モデル

Minskyは図2のような多層思考のモデルを提唱している。幼児期は本能や衝動、欲動などで直観的な思考により行動が行われており、成長に従い、成人では価値観や理想など思想的また倫理的な思考が組み合わさり、行動が行われる。

図1の多層次元モデルと内容は異なるが、本能的反応から学習反応や、熟考、内省的な思考、自己内省的な思考、自己意識的な内省など、本能的な層の思考から思想的な層の思考までの思考層が多層的に組み合わされ、行動に影響を与えていることが指摘され、図1に比較して、より人間の心理的で認知的な思考を表現したものである。

3. さいごに

筆者がモデル化した思考次元モデルやMinskyの考えやモデルなど、特定の行動に対して、思考は階層性を持ち、それらが組み合わさり、行動に結びついていることを記述した。

話は変わるが、昨今のユーザー調査では思考次元モデルにおける上位の層の思考を対象としている。下位の層の思考はそもそも把握することに困難を伴うことが多いが、こうした下位層の思考を把握することは正しい解の導出や、さらなる代替案の発想に貢献するのではないだろうか。

4. 参考文献

・Marvin Minsky(2006)『The Emotion Machine: Commonsense Thinking, Artificial Intelligence, and the Future of the Human Mind』 Simon & Schuster.

・Marvin Minsky, 安西祐一郎訳(1990)『心の社会』産業図書.

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